国際野外の表現展2015-16




国際野外の表現展2015-16[第12回展] 開催要項


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『強靭な想像力』

 国際野外の表現展2014-15は「サイトスペシフィックアート と地域創造」をテーマに、世界各地のアートイベントで活躍するアーティスト20名の参加を得て開催されています。作品は紅葉の頃に制作され、冬の雪景色、桜の頃、若葉の頃を経て盛夏まで展示されます。これによって、作品を作る側も観る側も、作品と自然が醸し出す四季折りおりの表情を楽しむことができ、作品は、日常生活においてアートとは無縁な人の心にも響き、感動を喚起し、その「場」の様々な特質が顕らかになってくると思われます。
 サイトスペシフィックアートとは、「場」の記憶ともいえる歴史、文化、風土、さらには具体的な地形、水脈、風向、植生、土壌、暮らし、祭り、といったその「場」のコンフィギュレイトな情報と、アーティストの心の奥底に染み付いてはなれないオブセッショナルなものとを、作品のコンセプトとして表現したものです。このようにして制作されるサイトスペシフィックアートは、その「場」でしか成立せず、かつアーティストにとってもそれまで追及した表現に新しい局面を付加した新しい作品となるはずです。
 本展の舞台である埼玉県西部丘陵地域は、古代より朝鮮半島からの渡来人が多く定住した場所です。渡来人がこの地を定住の地と決めた要因は何だったのでしょうか。祖国を離れ、旅で立ち寄る土地の山、岩、川、水、風、木、草などあらゆる自然界の情報に加え、先住民の暮らしなど文化的な情報をも鋭い観察力と深い洞察力で読解しながら辿る過酷な旅であったと思われます。そしてついに、渡来人たちはこの地を永住の地と定め、紙すき、養蚕、馬を操る技術、銅を精錬する技術など、当時の最先端技術を導入して国造りを進めました。なかでも昨年ユネスコ無形文化財に登録された細川紙は、1300年前高句麗の人々によってもたらされた技術が始まりといわれています。江戸時代には紙の需要が増大し、この地域一帯での紙の生産が盛んに行われました。規模が縮小したとはいえ紙すきの技術は現代に受け継がれています。紙の原料コウゾの栽培に適した土壌、気候地形そして豊かな清流があることを確認したうえでの定住だったと思われます。
 この高句麗からの渡来人を統帥した高麗王若光を主神とする高麗神社に隣接する聖天院の裏山には、緑色の岩壁が露出しています。渡来人はこの緑色の石「緑泥片岩」の岩脈の近くには国の根幹となる銅の鉱石があることを知っていてこの地を選定したのではないかと推測されます。そしてその後まもなく、この地域の北側の秩父市黒谷では、日本最古の流通通貨である和同開珎を生産した銅の鉱石が産出されています。また、この丘陵地域の古い神社の祭礼では「やぶさめ」が奉納されます。手ばなしで馬に乗り弓を引く技術は騎馬民族に由来し、渡来人がこの地に導入しました。平安時代武士階級が台頭すると、乗馬に優れた関東武士は力で貴族を圧倒し、源氏として鎌倉幕府を開くに到りました。頼朝は、あの緑泥片岩に阿弥陀如来を表す梵字を刻んだ板碑を、御家人の証として、関東各地の豪族に与えました。この「青板碑」は今でも関東各地の古い村々の入り口で見ることができます。これはきっと、関東武士が緑泥片岩に宿るこの地の記憶を読みとり、敬意を表したからではないでしょうか。
 高度資本主義経済という霧に覆われ未来の姿を見通せない現代社会に暮らす私たち現代人の想像力は、氾濫する物、情報、イメージに押し流され、衰退の一途をたどっています。このような時代にこそ、あたかも古代渡来人のように、強靭な想像力を備え「場」の記憶と向き合う必要があります。アートの表現は、「場」に潜む価値を再認識し、新たな価値を構築するためのひとつの契機といえます。
 最後になりましたが、本展の開催にあたり、多大のご支援とご協力を賜りました関係各位に対し、心より感謝申し上げます。

小野寺優元


1.名称 国際野外の表現展2015-16 
International Openair Expressions 2015-16
  • 国内外から集まったアーティストたちの里山空間に表現された作品を通じて、現代社会が直面する様々な問題を顕かにするとともに、地域に潜在する固有の魅力を顕在化させる。
  • 比企丘陵とその周辺空間は秩父の山並みを背景に東京首都圏へせり出した自然のアートステージ。
  • この自然と歴史が豊かに息づく里山空間をアートの発信拠点に位置づけよう。

2.主催 国際野外の表現展実行委員会

3.協力 東京電機大学理工学部

4.後援 埼玉県、埼玉県教育委員会、東松山市、鳩山町、アルテクルブ

5.会期 ○交流期間:2015年9月20日(日)~11月27日(金)
○作品展示期間:2015年11月29日(日)〜2016年7月31日(日)
○アーティストプレゼンテーション・レセプションパーティー:2015年11月28日(土)
  • 作品は交流期間中に順次設置、現地制作、展示され、作品の情報はWebサイトのアートマップ上で更新される。出品作品が出そろった後アートマップを印刷し各拠点に配置する。
  • 一部の耐久性の乏しい作品、やむを得ない事情が生じた作品は会期中であっても展示が中止されることがある。
  • 交流期間中は、制作の過程を体験したり、作家と市民・学生が交流し、アートリテラシーを図る。

6.会場 東京電機大学鳩山キャンパス

比企丘陵の一角を占める東京電機大学鳩山キャンパスと周辺地域には、森、丘、池、谷、広場など表情豊かな里山空間がある。


7.趣旨 国内外でサイトスペシフィックアートを展開しているアーティストたちのアート力を活用し、地域社会に潜在する固有の魅力を顕かにする。併せて、アーティストと市民、学生の交流を通じ、国際的なアートボランティア育成を展開するとともに、NPO活動とも協働しながら豊かな地域社会の創造に寄与する。

8.テーマ 「サイトスペシフィックアートと地域創造」

9.目的
  1. サイトスペシフィックなアート表現を通じ、地域に潜在する固有の魅力を顕在化させる。
  2. 市民・学生とアーティストの国際的な交流の場を設ける。
  3. 里山空間でアート作品に遭遇することにより、アート作品のメッセージを感受するよろこびを体感してもらう。
  4. アートボランティア活動を促進する。
  5. NPO活動と協働し、地域固有の資源発掘に寄与する。

10.企画事業
  1. アーティストプレゼンテーション:映像を使った自身の作品紹介。
    ※出品作家全員参加。作品の趣旨、テーマ、制作過程、背景などを一般の人々にわかりやすいように説明する。
  2. 小作品展:作家の制作コンセプトが凝縮した小作品の展示。
  3. Webサイト:http://www.ioe-hiki.comを運営。
  4. 記録冊子出版。
  5. アート Map を作成。
  6. アートガイド:作品を巡回しながらアートについて語り合う。

11.資金
  • 国際野外の表現展サポート協議会を通じ、企業協賛、個人協賛を広く募る。
  • 国・県・民間財団に助成を申請する。

12.出品作家 [海外作家] 
リ ウンウ RI Eung-woo (TDU)
イ ソンジュ LEE Sun-ju (TDU)

[国内作家] 
秋山秀馬 AKIYAMA Shuma (TDU)
赤松功 AKAMATSU Isao (亜露麻・TDU)
石坂孝雄 ISHIZAKA Takao (TDU)
衛守和佳子 EMORI Wakako (TDU)
金子清美 KANEKO Kiyomi (くらんぼん)
金田菜摘子 KANEDA Natsuko (TDU)
木村勝明 KIMURA Katsuaki (TDU)
児玉士洋 KODAMA Shiyo (TDU)
中沢知枝 NAKAZAWA Chie (TDU)
根木山和子 NEGIYAMA Kazuko (TDU)
沼田直英 NUMATA Chokuei (アートヒル)
野口栄一 NOGUCHI Eiichi (アートヒル・TDU)
野見山由美子 NOMIYAKA Yumiko (TDU)
菱田祐一郎 HISHIDA Yuichiro (アートヒル)
間地紀以子 MACHI Kiiko (アートヒル)
松井ゆめ MATSUI Yume (TDU)
望月月玲 MOCHIZUKI Getsurei (TDU)
山本あヤ YAMAMOTO Aya (TDU)
山口俊朗 YAMAGUCHI Toshiro (アートヒル)
吉田佑子 YOSHIDA Yuko (TDU)
東京電機大学岩城研究室 TDU IWKI Laboratory (TDU)

13.国際野外の表現展サポート協議会

支援者が会員となった本展の母体団体。

14.事務局 〒355-0051 埼玉県東松山市白山台15-19 小野寺優元 方
TEL/FAX:0493-35-4506

15.Webサイト http://www.ioe-hiki.com/






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